2023年11月21日

近年タクシー広告の人気が高まっていますが、狙った効果を出すには周到な準備が必要であることをご存知ですか?
この記事では、そんなタクシー広告の中でも、映像を使った動画広告(以下「タクシー動画広告」)の特徴と費用対効果について詳しく解説します。
タクシー広告の特徴から、メリットやデメリット、配信費用や実際の導入事例にいたるまで、広告配信時のポイントが漏れなく理解できる内容ですので、検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
拡大を続けるタクシー広告市場

タクシー広告の市場規模は、タクシー広告の市場拡大と連動して拡大を続けており、2022年の交通機関のデジタルサイネージ市場は358億円規模に達しました。
背景には、都内を走るタクシーへのデジタルサイネージ用ディスプレイ取付けがほぼ完了し、広告媒体としての安定成長が見込まれることがあるようです。
タクシー広告の種類

タクシー広告には、タクシー広告を含むさまざまな種類があります。
各広告の特徴を、タクシーの車外広告と車内広告に分けて説明します。
車外広告
タクシーのボディやドアなど車外に広告を掲出するのが車外広告です。車外広告の種類は以下の3つです。
- ラッピング広告
- ステッカー
- 行灯広告
ラッピング広告

タクシーのボディ全体を覆う広告が「ラッピング広告」です。広告が掲載される面積が非常に大きいため、外部からでもよく目立ちます。
信号待ちをしている歩行者など、たくさんの人に目にしてほしい場合に有効です。
ステッカー広告

タクシーのボディやリアウインドウ、サイドウィンドウなどにステッカー形式の広告を貼るのが「ステッカー広告」です。ラッピング広告ほどではありませんが、タクシーの周辺を歩いている人の注目を集めやすいと言えるでしょう。
特に、タクシーに乗車する際は確実に視界に入るため、タクシーをよく利用する層に向けてリーチしたい場合に有効です。
行灯広告

行灯広告(あんどん)は、車の屋根の中央に搭載されている内照式のディスプレイ(ルーフトッパー)に掲示する広告です。明るい昼間では余り目立ちませんが、ライトで照らすことにより夜間において強力なPR方法となりえます。
車内広告
タクシーの車内で展開する広告が「車外広告」です。車外広告の種類は以下の4つです。
この記事で詳しく解説する「動画広告」は、この車内広告の種類の中の一つになります。
- アドケース
- ヘッドレストポスター
- サンプリング
- 動画広告(タクシーサイネージ)
アドケース

運転席や助手席の背もたれにリーフレットを置く方法です。ヘッドレストポスターと同様に、最も古くからみられる車内広告です。
低コストで導入できるため、地方の小さな商圏のタクシーにも普及しています。
ヘッドレストポスター

助手席のヘッドレストや運転席の防犯ボードに、紙製のステッカーやポスターなどを貼る広告です。乗客の目線の高さに広告があるため、アイキャッチ効果は非常に高いと言えます。
サンプリング

乗客が降りる際、運転手がノベルティや試供品などを手渡すのが「サンプリング」です。視覚的なPRを超えて商品を実際に体験してもらえる点で、かなり特殊な車内広告だと言えるでしょう。
ただし、運転手が試供品などを手元に常備しておく必要があるため、リーチできるボリュームには限りがあります。
動画広告(タクシーサイネージ)

車内に設置したタブレットやモニターなどに、映像広告を配信するのが「動画広告」です。デジタルサイネージを使った広告なので「タクシーサイネージ」とも呼ばれています。
動画広告を配信するタブレットやモニターは、運転席や助手席の背面、座席間のスペース、車窓などに設置されます。
ここからはタクシー広告について詳しく説明します。
タクシー動画広告の特徴とは
タクシー動画広告にはどのような特徴があるのでしょうか?
従来のタクシー動画広告と比較しながら、以下の3つについて解説します。
- どのような地域にも配信できる
- ターゲットの設定は自由自在
- 技術とコネクションのある制作会社が必要
どのような地域にも同時配信できる
タクシー動画の配信地域は、東京や大阪のような大都市だけでなく、地方都市をふくむ全国に対応しています。
デジタルサイネージに対応した受信機器さえ取付けてあれば、どのタクシーにも漏れなく同時配信できるのが、タクシー広告の特徴です。
ターゲットの設定は自由自在
タクシー広告はターゲットも柔軟に設定できます。リーチしたい主な対象は経営者や富裕層などですが、一般のビジネスマンや主婦など、より広い購買層をターゲットとすることも可能です。
最近はデジタルの強みを生かして「顔認証機能」を備えたタクシーサイネージも増えており、乗客の性別や年齢などに応じた広告を配信できるようになっています。
技術とコネクションのある制作会社が必要
ステッカーやポスターなどとは違い、「映像」による広告であることがタクシー動画広告の最大の特徴です。
したがって、映像コンテンツに特化した高度な技術を持った制作会社でなければ、タクシー動画広告は制作できません。年々動画広告のクオリティは上がっておりテレビ局のCMレベルのクオリティで広告が展開されています。
品質を上げるために、大手広告代理店を伴って著名な芸能人をキャスティングするケースも多いので、そのような広告代理店とのコネクションが強い制作会社なら尚、理想的です。
タクシー広告のメリット

タクシー広告には、以下のようなメリットがあります。
- 乗客の注目を集めやすい
- 刷り込み効果が高い
- 「ターゲット」「セグメント」「顔認証」で訴求力を最適化
- 経営者や決済権者をターゲットにしやすい
- コンテンツ制作の自由度が高い
乗客の注目を集めやすい
タクシー広告は、閉ざされた車内空間のなか乗客の目の前で流されるため、半強制的に見ざるを得ない広告と言えるでしょう。しかもポスターのような紙の広告とは異なり、豊かな映像と音声で感性を刺激してくるので、いやおうなく乗客の視覚と聴覚を集めてしまいます。
このようにタクシー広告は、乗客の注目をいやでも集めてしまう性質があることから、コンテンツとターゲットの関心が合致した場合に、能動的検索や問い合わせ等につながることが強く期待できるのです。
刷り込み効果が高い
タクシー広告は、広告主が設定するタイミングで繰り返し流せるのが特徴です。乗客側からすると、同じ広告が繰り返されるのはあまり快く感じないこともあるでしょう。
しかし、広告主側からするとピンポイントですりこみ効果を高められる点で、大きなメリットがあると言えます。
「ターゲット」「セグメント」「顔認証」で訴求力を最適化
タクシー広告は、性別や年齢などの「ターゲット」、地域や曜日、時間帯などの「セグメント」を指定できます。また、顔認証機能を備えるタクシーサイネージも増えており、ターゲットの性別や年齢に合ったコンテンツで訴求力の最適化が可能です。
経営者や決済権者をターゲットにしやすい
タクシーを利用する属性には偏りがあり、特に会社経営者は月10回以上利用する人が約50%にもなります(※)。
したがって、タクシー広告は、経営者など決済権を持つ層に効率よくリーチできる稀有な手段だと言えるでしょう。
※参照:東京ハイヤー・タクシー協会
コンテンツの自由度が高い
コンテンツの自由度が高いのもタクシー広告のメリットです。
シンプルなメッセージを送るものから、俳優をキャスティングしたドラマ仕立ての映像まで、多彩な表現が可能です。
タクシー広告のデメリット

タクシー広告には、メリットだけでなくデメリットもあります。
- 配信コストが高い
- リーチする相手が限定される
- 効果測定が難しい
- 不快感を与える可能性も
配信コストが高い
後述するとおり、タクシー広告の費用は安くありません。ポスターやステッカーなどを使う広告と比べると1.5倍以上の開きがあります。
リーチする相手が限定される
タクシー広告には「経営者や決済権者をターゲットにしやすい」というメリットがあると説明しましたが、それは「一般のビジネスマンや主婦にはリーチしにくい」ということでもあります。たとえば、月に10回以上タクシーを使う割合は、会社員「9%」で、主婦「5.8%」です。
効果測定が難しい
タクシー広告の場合、WEB広告における「CPA(コンバージョン単価)」のような効果測定はできません。
ある商品を契約した顧客の全員にアンケートを取り、「タクシー広告が決め手になった」という人の割合を調べれば効果測定できるかもしれませんが、現実には困難です。
なお、後述する「GROWTH」とノバセル株式会社が、タクシー広告の効果測定およびレポート提供をパッケージした「ノバセルパッケージプラン」を共同開発していますが(出典:PRTIMES)、GROWTHのサイネージで配信することが条件なので全体には適用できません。
不快感を与える可能性も
先に説明したように、「乗客の注目を集めやすい」ということがタクシー広告の大きなメリットです。
しかしこれは、デメリットにもなりえます。至近距離で一方的に流れる動画広告からは逃げることができないため、広告主や商品に対して不快感を抱く人がいるかもしれません。
タクシー広告の配信費用

タクシー広告に大きなメリットがあるとしても、気になるのは「費用」ではないでしょうか?
タクシー広告の費用は「制作費用」と「配信費用」に分けられますが、制作費用はピンきりですので、ここからは配信費用についてのみ説明します。
代表的な配信会社は「Tokyo Prime」と「GROWTH」
タクシー広告を配信する会社としては、「Tokyo Prime」と「GROWTH」が双璧です。両社の特徴を紹介してから、それぞれの主なプランの配信費用について説明します。
「Tokyo Prime」
引用:Tokyo-Prime 媒体資料 2023.10〜2023.12
「Tokyo Prime」は、「モビリティ×マーケティング」を標榜する株式会社IRISが運営するタクシーサイネージです。
「Tokyo Prime」のサイネージを導入しているタクシーは全国6万7,000台、配信地域は32都道府県、月間リーチ数は3,350万人におよびます。
「GROWTH」

「Tokyo Prime」に次ぐ規模を誇るタクシーサイネージが、株式会社ニューステクノロジーが運営する「GROWTH」です。
東京23区内で1万1,500台のタクシーにサイネージを設置しており、都内のタクシー利用者のカバー率は約40%に達しています。
タクシー広告にかかる費用
タクシー広告の費用について、「Tokyo Prime」の主なプランをチェックしてみましょう。
メニュー名 | 台数・枠数・タイミング | 料金/想定再生単価 |
---|---|---|
Premiun Video Ads(FULL) | 全国6万7,000台・1枠・発車直後1本目 | 1,500万円/3.3円 |
Collaboration Video Ads (FULL) | 同上・7枠・発車から 2本目〜8本目 | 1,000万円/3.1円 |
Standard Video Ads (FULL) | 同上・12枠・Collaboration Video Ads終了後 | 510万円/3.0円 |
参照Tokyo-Prime 媒体資料 2023.10〜2023.12
「GROWTH」の主なプランの費用は以下のとおりです。
メニュー名 | 台数・枠数・タイミング | 料金/再生単価 |
---|---|---|
FIRST VIEW | 都内1万1500台・1枠・発車直後1本目 | 700万円/4.6円 |
BUSINESS VIEW | 同上・6枠・FIRST VIEW終了後〜7本目 | 500万円/4.1円 |
ECONOMY VIEW | 同上・10枠・BUSINESS VIEW終了後 | 300万円/3.7円 |
参照GROWTH MEDIA GUIDE 2023.07-12
費用対効果はシビアに見積もったほうがいいかも?
「Tokyo Prime」の「Premiun Video Ads(FULL)」は全国展開なので高額なのは仕方ありませんが、「GROWTH」の都内に限定したベーシックなプラン「ECONOMY VIEW」でも「300万円」からの費用が必要です。
配信期間はいずれも1週間単位なので、2週間以上配信したければ、上記の数倍のコストがかかります。
したがって、よほど練りに練ったコンテンツを厳選したターゲットに届けないかぎり、高い費用に見合った効果は望めないかもしれません。
費用対効果にこだわるなら他のタクシー広告も検討する
たとえば、助手席のヘッドレストに掲出するポスターの場合、1台につき「月額1,800円」からが相場ですので、都内1万台のタクシーに1ヶ月間掲出しても「1800万円」で済みます。
一方、同規模の動画広告を「GROWTH」の「ECONOMY VIEW」で配信しようとすると「3000万円」近くかかるわけですから、コストの差は「1000万円」を超えてしまいます。
費用対効果を厳しく見積もるなら、動画広告以外のタクシー広告との比較は必須だと言えるでしょう。
タクシー広告の活用成功事例を紹介

最後に、タクシー広告の活用に成功した事例を4つ紹介します。
商品の販売だけでなく、自治体の人材雇用や大手新聞社のデジタルコンテンツなど、幅広い事例ばかりですので参考にしてください。
楯の川酒造の事例
楯の川酒造株式会社の高級ブランド「光明」は、ごく限られたマニアにしか知られておらず、本来のターゲットである高所得者層の購買が伸び悩んでいました。
そこで「Tokyo Prime」に相談したところ、提示されたペルソナが「光明」のターゲットに合致していたためタクシー広告の導入を決めたとのこと。
その結果、「光明」の指名検索が12.55倍に増加し、商品供給が追いつかない状況になったそうです。
読売ジャイアンツの事例
プロ野球の読売ジャイアンツは、シーズンシートの契約者に法人が多く、年齢層も高いことに着目。
これはタクシーを多く利用する層とそっくりそのまま重なります。そこで「GROWTH」のタクシー広告で、都内企業の決済者層へ直接訴求することを狙いました。
通常の広告枠30秒にメディア枠「20秒」を加えた「50秒」の動画を配信したところ、広告を見た顧客からの声掛けや、シートに関する問い合わせの電話が増えました。また、シーズンシート契約には至らなくてもドームで観戦するライトユーザーにもアプローチできたと実感しているそうです。
参照GROWTH
神戸市人事委員会の事例
神戸市では採用強化のため首都圏の転職希望者を取り込もうと、第一線で活躍する都内ビジネスパーソンをターゲットに訴求できる「GROWTH」で動画広告を配信しました。
配信期間がわずか1週間だったにもかかわらず、QRコードのアクセス数が「33件」発生。配信週のサイト流入数全体が47件だったので、7割以上がタクシー広告からのアクセスとなり、動画広告経由の応募者も2名確認できたそうです。
参照GROWTH
日本経済新聞社の事例
約1,000万人が登録する「日経ID」を活用したデジタルサイネージ事業に取り組んでいる日経新聞社は、「Tokyo Prim」のコンセプトである「プレミアムメディア」「タクシー乗車体験(ユーザー満足度)の向上」に共感し、オリジナル動画番組「Ride on NIKKEI 」の配信を始めました。
「Ride on NIKKEI 」では、ビジネスパーソン向けのTIPSを紹介するコンテンツや日経のシェアオフィス事業である「OFFICE PASS」の事例記事の紹介などを配信。取材力や企画力を生かした高品質なコンテンツに多くの反響が寄せられているそうです。
まとめ〜費用対効果に注意しながらタクシー広告を活用しよう!
タクシー広告はターゲットさえ間違わなければ、ピンポイントで訴求できる確率が高いと言えるでしょう。とはいえ、狙った効果が獲得できるかどうかは、配信する映像の品質やターゲットの選定が的確であることが必須条件です。
決して安くはない費用を無駄にしないためも、今回ご紹介した内容を参考にして、タクシー広告の利用を検討してみてください。
また、タクシー広告と同様に狙いたいターゲットへアプローチする事ができる方法の一つとして、当社で特におすすめしたいのが、位置情報を活用したWeb広告『MITE-KURU』。

位置情報データからターゲットをピンポイントでセグメントし、経営者層以外のユーザーに対しても適格なアプローチが可能になりますので、広告の配信面で悩んでいる方はぜひ検討してみてください。
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