2026年1月27日
「鉄骨鳶(てっこつとび)の募集をかけても、経験者は愚か、見習いすら来ない」
「若手が入っても、高所の恐怖や夏の暑さに耐えられず、すぐに辞めてしまう」
「ファブリケーター(鉄骨製作工場)からの仕事はあるのに、建てる人間が足りなくて断っている」
ビル、マンション、工場、商業施設。あらゆる建築物の「骨」を作る鉄骨工事。
その最前線で戦う「鉄骨鳶」の不足は、建設業界全体のアキレス腱となっています。
足場鳶とは異なり、クレーンを使った重量物の揚重、高所でのボルト入れ、本締め、溶接といった高度な技術と度胸が求められる鉄骨鳶。
2024年問題による労働時間規制や職人の高齢化が進む中、「採用」はもはや会社の存続をかけた最重要課題です。
しかし、ハローワークで待っていても、求人誌に高い掲載費を払っても、状況は変わりません。
なぜなら、ガッツのある若者や腕利きの経験者は、求人誌の中ではなく「スマホの中」にいるからです。
今回は、鉄骨工事業界に特化し、会社の半径数キロメートルにいる人材をピンポイントで獲得する「ジオターゲティング広告」の活用戦略について、8,000文字相当のボリュームで徹底解説します。
この記事で得られるノウハウ
- なぜ従来の求人媒体では鉄骨鳶が集まらないのか
- スマホの位置情報を活用した「ジオターゲティング広告」の全貌
- 「置き場(ヤード)」の近くに住む若者を狙うメリット
- 「建て方(建方)」の迫力を武器にする動画クリエイティブ戦略
- 履歴書不要・LINE応募など、職人の応募ハードルを下げる実務フロー
目次
鉄骨鳶が「絶滅危惧種」になりつつある理由
まず、なぜ鉄骨鳶の採用がこれほどまでに難しいのか、その構造的な原因を直視しましょう。
単なる「人手不足」ではなく、鉄骨ならではの事情が絡んでいます。
1. 「危険・キツイ」イメージの先行
建設業の中でも、鉄骨鳶は「最も危険な職種」の一つと見られています。
足場がまだ組まれていない梁(はり)の上を歩く姿は、一般の人から見れば「命知らず」に見えます。
また、夏場の鉄骨は火傷するほど熱く、冬は凍えるほど冷たい。
この過酷なイメージが、安定志向の現代の若者を遠ざけています。
2. 専門性の高さと育成期間
足場鳶なら数ヶ月で部材の名前を覚え、ある程度動けるようになりますが、鉄骨鳶はそうはいきません。
玉掛けの技術、無線でのクレーン合図、図面を読む力、ボルトの規格知識、アーク溶接やガス切断の技術。
一人前になるまでに時間がかかるため、教育コストを敬遠する会社も多く、未経験者の入り口が狭くなっています。
3. 若者の「検索離れ」
かつては求人誌をめくったり、Googleで「〇〇市 建設業 求人」と検索したりするのが当たり前でした。
しかし、今のZ世代(10代後半〜20代前半)は、自分から能動的に仕事を「検索」しません。
彼らは、TikTok、Instagram、YouTubeなどのSNSを、受動的に眺めています。
「流れてくる情報」の中で、直感的に「スゲー!」と思ったものだけをタップする。この行動様式の変化に対応できていない求人は、彼らの視界にすら入っていないのです。
半径5kmを制圧する「ジオターゲティング広告」とは
そこで導入すべきなのが、Web広告技術の「ジオターゲティング」です。
これは、スマートフォンのGPS(位置情報)を活用し、「指定した場所から半径〇km以内にいる人(住んでいる人)」にだけ広告を配信する仕組みです。
「デジタル版」の現場シート広告
イメージしてください。
あなたの会社の置き場(資材センター)を中心に、半径5kmの円を描きます。
その円の中に住んでいる18歳〜30歳の男性のスマホにだけ、
「置き場までバイクで10分以内のキミへ。地図に残るデカイ仕事をしないか?」
という動画広告が、YouTubeの合間やインスタのストーリーに流れるのです。
これは、建設現場の養生シートに出す看板広告の効果を、デジタル上で、しかもターゲットを絞って行うようなものです。
新聞を取らない若者に折込チラシは届きませんが、スマホの中への「強制配信」なら確実に届きます。
無駄な広告費を極限までカット
鉄骨鳶の仕事は、朝が早いです。
現場が遠方の場合、朝5時や6時に置き場に集合し、トラックで向かいます。
このスタイルにおいて、自宅から置き場までの「通勤時間」は、若者にとって最大のストレスです。
県全域に出す求人広告は、通えない距離の人にも表示されるため、広告費の無駄が生じます。
ジオターゲティングなら、「通える範囲(置き場の近く)の人」だけに予算を集中投下できるため、採用効率が劇的に向上します。
ターゲット別攻略法:鉄骨鳶を一本釣りする戦略
ジオターゲティングの強みは、「場所」と「属性」を掛け合わせられる点です。
鉄骨工事業における有効なターゲティング戦略を紹介します。
戦略1:自社置き場(ヤード)の半径3km〜5km
これが王道です。
鉄骨鳶にとっての「職場」は、現場ではなく「置き場」です。
「朝、ギリギリまで寝ていられる」「帰りが楽」
このメリットは、給料の高さ以上に強力な入社動機になります。
地元採用を強化することで、通勤手当やガソリン代の削減にもつながります。
戦略2:工業高校・ポリテクセンター周辺
卒業後の進路を考えている高校生や、職業訓練を受けている求職者をターゲットにします。
工業高校の半径1kmに設定し、「高いところが好きな人」「モノづくりが好きな人」に向けたメッセージを配信します。
「溶接の資格、活かせます」という訴求も有効です。
※未成年の採用には学校の許可などルールがあるため、まずはアルバイト募集や企業説明会への誘導が有効です。
戦略3:競合他社・ホームセンター周辺
少しアグレッシブですが、近隣の同業他社(鉄骨・足場・鍛冶工事会社)の置き場周辺や、職人が集まる「コーナンPRO」「ワークマン」「建デポ」などの周辺に配信することも可能です。
「今の会社、人間関係が悪いな…」「給料が上がらないな…」と悩んでいる経験者(即戦力)に対して、
「経験者優遇!日給20,000円〜」「常用・手間請け同時募集」といった好条件を提示し、引き抜く(転職を促す)戦略です。
「建方(たてかた)」の迫力を武器にするクリエイティブ
ターゲットが決まったら、次は「何を見せるか(クリエイティブ)」です。
ここで手を抜くと、いくら広告を出してもクリックされません。
鉄骨鳶には、他の職種にはない「圧倒的なビジュアルの強さ」があります。
1. 「フリー素材」は絶対NG!現場のリアルを見せろ
求人広告によくある、笑顔でヘルメットを被った清潔なモデル写真。
あれを見た瞬間、本物の職人は「こいつら現場を知らねえな」と冷めます。
使うべきは、「自社の職人の、真剣な眼差しと背中」です。
・青空を背景に、鉄骨の梁の上を歩く姿
・高力ボルトをシャーレンチで締め込む瞬間の火花
・クレーンで巨大な柱が吊り上げられるダイナミックな映像
画質はスマホで十分です。むしろ、GoProなどで撮影した主観視点の動画(POV)は、TikTokやReelsで「バズる」可能性すらあります。
「高所恐怖症の人はお断り」くらいの迫力ある映像が、適性のある若者を惹きつけます。
2. 「鳶」というブランドを売る
鉄骨鳶は、現場の「花形」です。
地図に残るランドマークの、その一番最初の骨組みを作る。
この「プライド」と「達成感」をコピーで表現します。
キャッチコピー例:
「俺たちがいないと、ビルは建たない。」
「空に一番近い場所で、デカイ仕事しようぜ。」
「学歴?関係ねえ。度胸と腕で稼ぐ世界だ。」
3. 「金」の話は隠さず具体的に
カッコよさだけでなく、実利も重要です。
「頑張り次第で稼げます」という曖昧な表現は嫌われます。
良い例:
「未経験でも日給13,000円〜。3年目で年収550万の実績あり。」
「前払い・日払い応相談(規定あり)」
「寮完備(個室・Wi-Fi無料・即入居可)」
「資格取得費用(玉掛け・鉄骨組立等)は全額会社負担」
特に「日払い」「寮」というキーワードは、今すぐ生活を変えたい若者にとって強力なフックになります。
応募のハードルを「地面」まで下げる
広告をクリックした後の「受け皿」も重要です。
ここで「履歴書を郵送してください」や「電話で問い合わせてください」と書いてあったら、若者は100%離脱します。
履歴書不要・LINE応募が常識
今の若者は、履歴書を書くためにペンを持つことすら億劫がります。
そもそも、鳶職の採用において、学歴や職歴の細かい記述はそこまで重要ではないはずです。
重要なのは「やる気」と「体力」と「根性」です。
【推奨する応募フロー】
1. 広告をクリック
2. 採用専用のランディングページ(LP)を見る(動画メイン)
3. 「LINEで応募・質問する」ボタンを押す
4. 自動応答で「名前」「年齢」「経験の有無」だけ送信
5. 担当者から「一度、手ぶらで置き場に遊びにおいでよ」と返信
この「チャット感覚」で完結するフローを作れるかどうかが、勝負の分かれ目です。
「面接」という言葉を使わず、「面談」「見学」と呼ぶだけでも心理的ハードルは下がります。
入社後の「ギャップ」を埋める定着戦略
Web広告で若者を集めることはできます。
しかし、最も難しいのは「辞めさせないこと」です。
「思っていたのと違う」「先輩が怖い」といって数日で飛ぶ若者を減らすために、受け入れ体制も見直す必要があります。
「動画」で仕事のキツさを先に伝える
広告ではカッコいい面を見せますが、面接や説明会の段階で、仕事の厳しさもしっかり伝えておくべきです。
これを「RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)」と言います。
・重量物を扱うキツさ
・夏場の鉄板の熱さ、冬場の寒さ
・安全帯(フルハーネス)の重さ
・上下関係の厳しさ(命に関わるため)
これらを隠さずに伝え、それでも「やってみたい」と言った人間を採用することで、早期離職のリスクを減らせます。
「メンター(教育係)」を指名する
「見て覚えろ」は、今の若者には通用しません。
放置されたと感じると、すぐに孤独を感じて辞めてしまいます。
年齢の近い先輩を「メンター(教育係)」として指名し、
「仕事のことは、まずはこの先輩に全部聞け」
「昼飯も一緒に食え」
という環境を作ってあげてください。
「この会社には自分の居場所がある」と感じさせることが、定着への第一歩です。
キャリアパスの可視化
鉄骨鳶はずっと平社員ではありません。
「職長」「基幹技能者」への道があります。
「3年で職長になれば、給料はこうなる」「独立支援制度もある」といった将来像を見せることで、モチベーションを維持させます。
コスト比較:人材紹介 vs ジオターゲティング広告
最後に、経営的な視点でコストパフォーマンスを比較してみましょう。
【建設系の人材紹介・派遣会社】
・紹介手数料:年収の20〜30%(1人採用で100万円〜150万円)
・派遣料金:常用単価+マージン(非常に高コスト)
・メリット:手間がかからない。
・デメリット:とにかく高い。紹介会社経由の人間は、条件で動くため定着率が低い傾向がある。
【ジオターゲティング広告(自社採用)】
・広告費:月額5万〜15万円程度
・LP制作費:10万〜30万円(初期のみ)
・例:3ヶ月運用して若手2名採用できた場合、1名あたりの採用単価は10万円〜20万円。
・メリット:圧倒的に安い。近隣の通いやすい人材が採れる。
・デメリット:応募対応や面接の手間がかかる。
長い目で見れば、自社で採用力をつける(=ジオターゲティング広告の勝ちパターンを作る)ことが、最もROI(投資対効果)の高い投資となります。
まとめ:鉄骨鳶の未来は、あなたのスマホの中にある
「最近の若者は根性がない」と嘆く前に、彼らのスマホに「俺たちの仕事」を届けてみませんか。
鉄骨鳶の仕事は、AIにもロボットにも代替できない、究極のアナログ技術であり、日本のインフラを支える誇り高い仕事です。
体を鍛えたい、稼ぎたい、デカイことをしたい。
そんな根源的な欲求を持つ若者は、あなたの会社の近くにも必ずいます。
ただ、彼らはあなたの会社を知らないだけなのです。
ジオターゲティング広告は、最新のテクノロジーですが、やっていることは非常に泥臭い「地域への声かけ」です。
「近所の若者よ、ウチで一緒にデカイ鉄骨を建てないか」
その熱いメッセージを、デジタルに乗せて届ける。
まずは、Googleマップを開き、置き場の半径5kmにどれだけの住宅があるか見てみてください。
その屋根の下に、未来の職長が眠っています。
日本の現場を守るために、新しい採用の一歩を踏み出してください。
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